赤い糸~For you~
気づいたら…


ベンチには、私と池澤先輩だけだった。


二人で話したことはないから何か…気まずいなぁ。



「…体育館で最初、目があったの覚えてる?」



『…はい。』



忘れるはずがない。



幸せ過ぎて…



それ以上を求めてしまう自分が嫌になった時。



「その日の夜。中庭の桜の木の下にいただろ?」



『えっ…何で…?』



誰もいないと思ってたから、


びっくりした。



「あの日、部活が終わって…コーチに呼ばれたんだ。内容は新部員達についてだった。キャプテンだからとかいろいろ言われて、ムシャクシャしてて頭を冷やしに…あの場所に行ったんだ。」



驚いた。


先輩は悩みなんてないと思っていたから。


「桜の木の下には、人がいて…イライラし始めた。けど、すぐにそのイライラもなくなった。」


私は黙って聞いていた。



「そこにいたのは部活の時、楽しそうに笑っていた子だった。一つだけ部活の時と違うのが…その子の横顔には涙が流れていた。」



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