結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「おつかれさまでした。こんなもので大丈夫でしょうか?」

 スタッフ全員に丁寧に頭をさげながら、龍一は尋ねる。

「いやぁ、完璧です。ゲスト出演だけではもったいない! うちの看板番組でコメンテーターをしませんか?」

 ぽっちゃり体型のプロデユーサー、神田が真面目な顔で龍一をスカウトしはじめた。

「コメンテーターは器じゃないですが……社の宣伝になる取材なら、いつでも大歓迎ですよ。今後ともよろしくお願いいたします」

 龍一はにこやかな表情を崩さず、さらりとかわす。

「こちらこそ! 水無月社長ならどの番組でもひっぱりだこですから」

 神田は揉み手で、媚びた笑顔を向ける。

 頭をさげる相手を露骨に選んでいる彼とは対照的に、龍一はアルバイトのスタッフにも丁重に礼を言い、彼らの撤収作業を手伝った。

「そのテーブル、重いでしょう? こっち側を持ちますよ」
「ありがとうございます。助かります!」

 龍一はこういう行動を自然と取れる人間で、相手を恐縮させたりすることもない。雑談を交えながら、あっという間にスタッフの輪に溶け込んでしまう。
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