結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 まるで自分のことのようなワクワクしている彼女に、凛音はふふっと口元を緩めた。

 もちろん、早苗や奈央のように温かく受け入れてくれた人間ばかりではない。

 耳を塞ぎたくなるような陰口もたくさん聞いた。

 もっとも冷たい視線を向けられたのは、会社ではなく水無月の屋敷だった。

 表立って文句は言わないものの、『奥さまを追い出した憎い女の娘が』とみなの目が言っている。

 そんな針のむしろのような状態から救い出してくれたのは、意外な人物だった。

「お邪魔しま~す。久しぶりね、龍一。凛音ちゃんも!」

 水無月の屋敷に明るい声が響く。

 男性のようなショートヘアに大きな女優帽。ショッキングピンクのタイトなワンピースに身を包み、スーツケースを引いている。

「お、奥さま! いらっしゃいませ」
「やめて、やめて。その呼び方、ここにいる頃から大嫌いだったの」

 ずらりと並んで頭をさげる使用人たちに、彼女はケラケラ笑って片手を振ってみせる。

「お母さん。あいかわらず、派手ですね……」

 龍一はあきれた顔で壁にもたれかかるように姿勢を崩した。
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