結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「え~。自分で稼いだお金で買ってるんだから、いいでしょう。そうそう、ふたりにもお土産があるのよー」

 龍一の母親である結城(ゆうき)冬子(ふゆこ)はパリ出張帰りの空港から、そのまま駆けつけてきたようだ。

 トランクを開けて、大小さまざまな品物を取り出した。

「これは凛音ちゃんにね。マタニティ用のお洋服とベビー服! 男女どっちかまだわからないから、両方買ってきちゃったわ」
「冬子さん」

 凛音は複雑な表情で目の前の冬子を見つめる。

 龍一以上に、それこそ世界で一番凛音を憎んで当然の人間なのだが……時折この屋敷で顔を合わせる彼女はいつも凛音に親切だった。

(龍一さんにそっくりで、器の大きい強い女性。でも、この結婚はさすがに反対されるに決まってる)

 凛音はそう思っていたのだが、冬子の反応は意外なものだった。

 水無月家のどっしりと重厚な応接セットに、龍一、凛音、冬子、そしてこの屋敷で長く執事を務める老齢男性、(たちばな)が座る。

 彼の同席は冬子の希望によるものだ。

 冬子はにんまりと笑いながら言う。

「やっと、そういうことになったのね~。龍一ってば見かけに寄らず、奥手だからこっちがヤキモキしてたのよ」
「えっ……」
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