結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 今度は凛音に向き直り、冬子は申し訳なさそうな顔で肩をすくめる。

「離婚するときも似たような話をしたんだけどね。古い家に仕える人間は頑固で、つらい思いをさせて悪かったわ」
「……本当に、この結婚を許してくださるんですか?」

 凛音が言うと、冬子はくしゃりと笑って肩を揺らす。

「変なこと言うのね。誰の許しを得る必要もないでしょう。ふたりが決めることよ」

 龍一によく似た、意思の強い目元がふんわりと優しい弧を描いた。

 数名が水無月家を去り冬子のところへ行ったが、凛音が思っていたより多くの人間が水無月家に残ってくれた。

 会社のほうはもっと簡単だったと菅原が楽しそうに報告してくれた。

「結婚に不満を抱く者が多いようなら自分は辞任してグループからも去る。社長がそうおっしゃったら、ブツブツ言ってた方々も黙り込んでしまって……水無月龍一の辞任が株価に与える影響は甚大すぎるとの結論で、社長はその地位にとどまることになりました」
 
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