結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「以前は夏だったよな? 空気が乾燥しているほうが星は綺麗に見えるから」
「あぁ、なるほど」

 天体観測には冬が適しているとは、聞いたことがある。

 でも……凛音はほんの少し首を傾けて龍一を見る。男らしい首筋に水滴の流れる肌。直視できないほど妖艶だった。

 ぱっと顔を背けながら、ちいさくつぶやく。

「龍一さんと一緒だから……もあると思います」
「ん?」

 彼の声は甘く柔らかだ。

「龍一さんと見る景色はひとりのときよりずっと美しいし、食事もずっとおいしく感じる。ただ一緒にいられるだけで、楽しくて仕方ないんです」
「……この状況で、あんまり煽るな。自制できなくなる」

 くぐもった声で彼はささやき、ぎゅっと強く凛音を抱き締めた。

 龍一は長い髪をまとめている凛音のヘアクリップに手をかける。

「これ、ほどいてもいいか?」
「え、どうして――」

 返事を聞く前に彼はそれをすっと外してしまった。

 軽やかな栗色の髪がふわりと広がる。彼はそこに顔を埋めて、くすりと笑う。

「好きなんだ、凛音の髪。柔らかくてサラサラで」
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