結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 凛音の髪は染めているわけではないのに、かなり明るい。

 瞳も日本人にしては色素が薄めだ。母親は艶やかな黒髪の持ち主だったから、顔も知らない父親譲りなのかもしれない。

「小さい頃はこれのせいで、結構いじめられました」

 子どもの頃はもっと明るく外国人のようだったから、やんちゃな男の子たちによくからかわれたりした。

「だから、自分の髪はあんまり好きじゃなかったんですけど……」

 そこで言葉を止めて、凛音は満開の笑顔を見せる。

「今、好きになりました!」

 龍一が褒めてくれたから。我ながら単純だと思うけれど、彼の言葉はささいなことでも凛音には特別な意味を持つ。

 龍一は指先に凛音の髪を絡めて、クルクルともてあそぶ。

「ずっと触れたくて仕方がないのを我慢してた。この髪も、唇も、素肌も……」

 彼が長く秘めてきた思いを明かしてくれる。今はもう、それを素直に信じることができる。

「私も同じです。どんどん好きになっていくのが怖くて、できるだけ目をそらして、声を聞かないようにして」

 でも、そんな努力は無駄だった。止めようと思っても、龍一に恋する気持ちは加速するばかりで――。

「こっち向いて、凛音」
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