結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 龍一がくるりと凛音の身体を反転させて、ふたりは正面から向かい合う。

「もっと俺を見ろ。絶対に引き返せないよう、俺に溺れてくれ」

 熱のこもった瞳が凛音を射貫く。

 頭も身体も熱くてどうにかなってしまいそうだ。

「ふふっ。もうとっくに、溺れきってると思いますけど」

 小首をかしげた凛音の顎を、龍一の長い指がすくいあげる。ゆっくりと唇が重なる。

 湯気の立ちのぼる浴室に、舌の絡み合う淫らな音が響く。

「ふっ、あぁ」

 遠慮がちに差し出される凛音の舌を龍一はあっという間に絡め取り、侵略するかのように自身の唾液を送り込む。

 角度を変えて幾度も繰り返される口づけに、凛音は肩で息をしはじめた。

「苦しい?」
「えっと、のぼせてしまいそうで」

 浴室の暑さになのか、龍一のキスになのか、凛音自身にも判断できない。

 龍一は優しくほほ笑むと、凛音からすっと身体を引いた。

(あっ……)

 寂しい、物足りない。一瞬でもそんなふうに感じた自分のはしたなさに凛音は悶える。

(お腹に赤ちゃんがいるんだから……龍一さんは気遣ってくれたのに、私はなんてことを考えて)
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