結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 理性的に考えようとするのに、身体の奥深くが甘い疼きを訴えてくる。

 もう少しだけ彼に触れていたい、その欲望の火をなかなか消すことができない。

「お湯が熱すぎたかな。ほら、ちょっと身体を冷ませ」

 広いバスルーム内には小さなコーヒーテーブルと木製のリラクシングチェアが二脚、備えつけられているのだ。

 龍一に支えられながら、凛音は椅子に腰かける。裸を恥ずかしがっていると、龍一がバスタオルをかけてくれた。彼も腰にタオルを巻き、凛音に聞く。

「お茶を持ってくるよ。温かいのと冷たいの、どちらがいい?」
「……を」

 ささやくような凛音の声が聞き取れなかったのか、龍一は彼女の前に膝をつく。

「悪い、よく聞こえなかった」
「もう一度だけ、キスしたいです」

 今度は彼にも聞こえる音量で、そう言った。

 全身の血が顔に集まってくる、恥ずかしさに沸騰してしまいそうだ。

 ぎゅっと目をつむり、肩を震わせていると、彼がごくりと喉を鳴らす気配がした。

 おそるおそる目を開けると、煽情的にほほ笑む悪魔がぺろりと舌なめずりをしていた。

「イケない子だな、凛音は。必死にかき集めた俺の理性を簡単に捨てさせるんだから」
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