結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 凛音はなんだろう?と思いながら、足速にふたりに近づく。

 神田は名刺を差し出しながら、凛音に頭をさげる。
 すぐ近くにいた龍一がこちらに視線を向けたことに、凛音は気がつく。

「このたびはご協力をありがとうございました。横井がご迷惑をおかけしていませんでしたか」
「いえ、とても丁寧にご対応いただきました」

 テレビ局におけるプロデユーサーの地位はそれなりに高い。ただの窓口に過ぎない自分にどうしてわざわざ?という凛音の疑問はすぐに解けた。

 彼がおそるおそる、だが好奇心丸出しの表情で言ったからだ。

「水無月さんとおっしゃるんですね。では、やはり社長のご親族で?」

 この質問も、ジロジロと値踏みするような視線も慣れたものだが、決して気持ちのいいものではない。

『遠縁ですので』

 外部の人間に詮索されたときはこう返すと決めている。今回もそう答えようとしたところで、誰かの気配が近づきぐっと肩を抱き寄せられた。

 確かめるまでもない。そこにいるのは龍一だ。

「妹ですよ」

 端的に彼は言った。

「ほぅ、そうなんですね! へ~、なるほど!」
< 12 / 117 >

この作品をシェア

pagetop