結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 なにが〝なるほど〟なのかさっぱりわからないが、神田はますます遠慮のない視線を凛音に注ぐ。

「社長とはあまり似ていませんが、妹さんもお綺麗ですねぇ。いやぁ、これは絵になる! どうでしょう、ぜひツーショットを!」

 お世辞半分ではあるだろうが、彼は凛音の容姿を気に入ったようだった。

 顔立ちそのものは悪くないのに、控えめで薄倖そう。中年以上の男性は、往々にしてこの手の女に弱いものだ。

 だが、カメラマンを呼ぼうとした彼を龍一はさっと手で制した。

「彼女は撮らないでいただきたい」

 穏やかで、有り体に言えば御しやすい青年だと思っていた龍一がきっぱりと拒絶したことに、神田はいくらか面食らったようだ。小鼻を膨らませて、なんとか懐柔しようと頭を働かせている様子だ。

「家族の肖像は文字通り、家族がテーマですから。代々続いてきた水無月家を若い兄妹が支えているという絵はテーマに合致する。ぜひとも――」

 彼の嘘くさい熱意を龍一はバッサリと切り捨てる。

「彼女は広報部のいち社員で、経営とは無関係ですから。あぁ、カフェテリアの予約時間が過ぎてしまうな」
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