結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 物腰は柔らかいが、龍一は有無を言わさず彼らを追い出しにかかる。空気を読んだ奈央が不満げな顔の上司をなだめつつ、出口へと誘導する。

 神田を外に出すと、奈央はすぐに戻ってきて凛音に向かって元気よくお辞儀をした。

「本当にありがとうございました。放送後の反響は、またご連絡しますね」
「こちらこそ。お世話になりました」

 彼女はにこりとほほ笑むと、凛音にだけ聞こえるように声をひそめる。

「素敵な上司ってだけでなく、優しいお兄さんでもあったんですね!」

 カフェテリアを出ていく奈央たちテレビクルーを見送ってから、凛音は軽く振り返る。

 秘書と次の仕事の打ち合わせを始めた龍一の横顔が視界に入ると、胸の辺りがぐっと重苦しくなった。

 奈央はきっと、龍一が妹を大切に思うからメディア露出を拒んだと思ったのだろう。

 だが、そうではない。龍一は真実をありのままに告げただけだ。

『経営とは無関係』

 もっとはっきり言えば水無月家とは無関係という意味だ。

 凛音と龍一は血がつながっていない。凛音は輝かしい創業者一族の血を一滴も受け継いでいないのだ。
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