結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 チームに戻るとすぐに、直属の上司である三村早苗(さなえ)が凛音にそう尋ねた。

 早苗は二年前に他社から転職してきたやり手の女性で、三十九歳にして部長の椅子に座っている。彼女以外の部長職がほぼ全員五十代であることを考えると、異例の抜擢と言えるだろう。

 凛音は早苗のデスクまで歩いていき、簡単に先ほどの取材の様子を報告した。

「いい内容だったと思います。局の皆さんも満足そうでした」
「社長は話上手だし、なんと言ってもルックスがお茶の間受けするものね~」

 早苗はあけすけにそう言った。彼女は龍一のルックスのよさも広報のためなら存分に活用する主義で、龍一本人もそれを是としている。

「視聴率が楽しみね! それから、来週は例のイベントの進捗だけど……」
「準備できてます。明日、企画開発部と最終確認の打ち合わせを予定しています」

 凛音が説明すると、早苗は満足そうにうなずいた。

「さすが水無月さん、手際がよくて助かるわ」
「とんでもないです」

 謙遜する凛音の顔をじっと見て、早苗は小首をかしげた。
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