結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 龍一は安堵したようにふぅと息を吐いた。と同時に、彼のわずかな緊張も解けたようだった。

(龍一さんが緊張なんて、珍しいな……)

 凛音を同伴させることに、そんなに重大な意味があるのだろうか。聞くべきか否か迷っている間に、龍一から別の質問が投げかけられた。

「当日はなにを着る予定だ?」
「えっと、黒のパンツスーツを」

 ホストスタッフであることがわかるように広報部メンバーは黒スーツでと早苗から通達があったからだ。凛音の答えを聞いた龍一は露骨に表情を曇らせた。

「それはなしだな。できればイブニングドレスを。持っているか?」

 途中から彼の声に不安がにじむ。そして、その予感は的中していた。

「二十歳の祝いにと龍一さんが贈ってくださったカクテルドレスなら……」

 凛音のクローゼットにあるドレスは、成人後は必要になるかもしれないからと彼がプレゼントしてくれた優しいアイボリーカラーの一着のみだ。

「あれは今の凛音には子どもっぽいな」

 龍一は椅子から立ちあがると、すぐそばに置いてあるポールタイプのハンガーからスーツの上着を取った。

「まだ仕事が残ってるか?」
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