結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 ネイビーのジャケットを羽織りながら、凛音に問う。

「いえ、今日はもう片づけてからこちらに来ました」

 龍一の話がどんなものかわからないので、広報部の仕事はキリのいいところまで済ませ、ボードには『ノーリターン』と記載してから部屋を出てきた。 

 龍一は胸ポケットから車にキーを取り出して、言う。

「では、今からドレスを買いに行こう。靴とジュエリーも必要だ」

 思いがけない彼の発言に凛音は慌てふためく。多忙な彼にそんな無駄な時間を過ごさせるわけにはいかない。凛音は必死に彼を止める。

「だ、大丈夫ですから。金曜日までに自分でそろえます」

 だが、凛音に向ける龍一の目はよりいっそう険しくなった。

「……このあたりにかんするお前のセンスは信用ならない」

 ぐっと言葉を詰まらせた凛音に、彼はふっと口元を緩ませた。

「早くしろ」

 短く告げて、龍一は社長室を出ようとする。

 なにがなんだかわからぬままに、凛音はその背中を追った。
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