結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 龍一が車を停めたのは六本木にある高級ショッピングモールだった。

 車をおりた彼はスタスタと歩き出し、迷うそぶりもなくある店に足を踏み入れた。

「え……」

 目がくらむほど豪華な空間に凛音はたじろぐ。

 ブラックを基調としたシックな内装、ショーケースのなかできらめくハイジュエリー、華やかで洗練されたスーツにソワレ。

 世界中の誰もが知る高級ブランドだ。

「ここで選ぶんですか?」

 凛音の声は驚愕で上擦っているが、対する龍一は淡々としたものだ。

「あぁ。ドレスも靴もジュエリーも、それなりのものがそろってるからな」

 それなりどころではないと思ったが、言葉が出ない。この店ですべてをそろえようと思ったら、数百万はかかるのではないだろうか。

 そもそも、海外のハイブランドなど貧相なスタイルの凛音に着こなせるはずがない。

「龍一さん。こんな高級ブランドでなく、もっと私の身の丈に合ったもので」

 凛音は必死に言葉を重ねるが、彼は取り合ってくれない。

「別にブランドにこだわっているわけじゃない。凛音にはこの店が合うだろうと思っただけだ」

 龍一はモデルのように美しい女性店員に声をかけ、「彼女にトータルコーディネートを」と頼んだ。

「承知いたしました。すべてお任せくださいませ」
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