結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 差し出された生贄のように、凛音は問答無用で店の奥へと連れていかれる。

 サロンのような試着室で、次から次へと着替えをさせられた。

(身長も高くないし、胸もお尻もぺたんこだもの。似合うはずがない)

 凛音は鏡に映る自分の姿をできるだけ見ないようにする。

「ふむ。悪くないが、さっきの薄い色のほうが似合う気がするな」
「そうですね、色白なので淡い色がお似合いかと思います。こちらのブルーグレーのものなどいかがでしょうか」
「よさそうだな。では、次はそれを」

 着替えを終えるたびに龍一と女性店員にみっともない姿を披露するのは、凛音にとって公開処刑も同然だった。一刻も早く終わってほしいのに、ふたりはあれこれと盛りあがっていて、なかなか凛音を解放してはくれない。

 ようやく試着室を出たときには、龍一がイブニングドレスを二着とハイヒールを三足、ネックレスと指輪とイヤリングをそれぞれ数点ずつお買いあげしているところだった。

 総額は、恐ろしくてとても聞けない。

「あの……」
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