結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
『いいことを思いついた。お前が頭をさげて頼むなら、このまま水無月家に置いてやる。生涯、金に困ることはないぞ』

 その言葉から伝わってくるのは、龍一がいかに自分を憎んでいるか、それだけだった。

 凛音はすっと姿勢を正し、彼に頭をさげた。

『短い期間でしたが、お世話になりました。もうご迷惑をおかけすることはないようにします』

 龍一の表情が切なげにゆがむ。

 どうして彼のほうが傷ついたような顔をするのだろう。凛音は不思議でたまらなかった。

 苦笑交じりに彼は言う。

『かわいげのない子どもだな』
『お母さんも、いつもそう言ってました』

 龍一が長い脚で一歩踏み出す。ふたりの距離がぐっと近づく。

 彼の大きな手が伸びてきて凛音の頬に触れた。その温かさに凛音はひどく戸惑ってしまった。

(声も目も、すごく冷たいのに……手はとても温かいんだな)

 人肌のぬくもりを知らない凛音には、それがとてもおかしなことに思えたのだ。

『おもしろいものだな。一滴も血がつながってはいないのに、お前は俺にそっくりだ』
『え?』
< 37 / 117 >

この作品をシェア

pagetop