結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 知性、美貌、人脈、人間が欲しがるすべてを手中にしているような彼と、なにも持たない自分のどこに共通点があると言うのだろう。

 龍一はふっと唇の端を持ちあげ、不器用な笑顔を作った。

『ここにいろ。お前は俺の妹だ』

 ほんの気まぐれか、哀れみか。本当の妹に、水無月家の一員になんてなれないことはわかっていた。

 だが、龍一のこの言葉は凛音の心に深く染み入って、宝物のようにきらめいた。

 誰かに自身の存在を肯定してもらえるのは初めての経験だったのだ。

 あの日から龍一は凛音の特別になった。

 この気持ちが許されないものであることは知っている。けれど、モラルも理性もなんの役にも立ちはしない、運命に導かれるようにして凛音は龍一に惹かれていった。

(誰にも言わない。ひそやかに思い続けるだけだから……)
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