結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
よく見れば、凛音は整った美しい顔立ちをしているのだが、本人のおとなしい性格のせいなのか影が薄く、印象に残らないタイプの人間だ。細すぎる身体が女性としての魅力に欠けていることも自覚している。
(でも、問題ない。この縁談はきっとうまくいくはず)
相手にとって重要なのは〝水無月龍一の妹が妻になる〟という事実だけだ。利害関係にもとづく政略結婚なんてそんなもの。
龍一は凛音を見てはいなかった。デスクの上で開かれたままになっているスケジュール帳に視線を落とし、早口に告げる。
「それはよかった。兄として……お前の幸せを願うよ」
感情を持たないロボットが発したような台詞が、白々しく宙に浮いた。
凛音は下唇をかみ締め、震える声で言った。
(龍一さんの望む相手と結婚する、それは構わない。でも、せめて……)
「代わりに、ひとつだけお願いしてもいいでしょうか?」
龍一は弾かれたように顔をあげ、まっすぐに凛音を見つめた。
驚きに見開かれた瞳。社長でも兄でもない、水無月龍一の素顔を、凛音は本当に久しぶりに見たような気がした。
「……なんだ?」
(でも、問題ない。この縁談はきっとうまくいくはず)
相手にとって重要なのは〝水無月龍一の妹が妻になる〟という事実だけだ。利害関係にもとづく政略結婚なんてそんなもの。
龍一は凛音を見てはいなかった。デスクの上で開かれたままになっているスケジュール帳に視線を落とし、早口に告げる。
「それはよかった。兄として……お前の幸せを願うよ」
感情を持たないロボットが発したような台詞が、白々しく宙に浮いた。
凛音は下唇をかみ締め、震える声で言った。
(龍一さんの望む相手と結婚する、それは構わない。でも、せめて……)
「代わりに、ひとつだけお願いしてもいいでしょうか?」
龍一は弾かれたように顔をあげ、まっすぐに凛音を見つめた。
驚きに見開かれた瞳。社長でも兄でもない、水無月龍一の素顔を、凛音は本当に久しぶりに見たような気がした。
「……なんだ?」