結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 消え入りそうな声で凛音は訴えた。

 触れ合うだけの優しいキスすら知らないのに、こんな突然に大人の口づけをされたら戸惑ってしまう。龍一に幻滅されないか、不安で仕方がない。

「なにもしなくても……凛音は十分すぎるほど俺を昂らせる」

 龍一はくくっと唇の端をあげ、凛音の頬に優しく唇を寄せた。そのまま耳元まで這わせ、舌先で耳孔をくすぐる。

「んんっ」

 初めて知る、身体の奥からこみあげてくる感覚に凛音はびくびくと身体を震わせる。熱い吐息交じりに彼はささやく。

「それに、キスは……初めてじゃないはずだ」
「えっ」

 どういう意味かと聞こうと思ったのに、耳孔で暴れる彼の舌に翻弄され言葉を紡ぐことなど不可能だった。

 龍一は自然な仕草でするりと凛音のジャケットを脱がせ、床に放った。シフォン素材の黒いブラウスのボタンもあっという間に外され、シャーベットピンクの下着があらわになる。

 凛音は羞恥に頬を染め、小さく言う。

「もっとオシャレをしてくればよかったです。この前のドレスみたいに」
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