結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 大人っぽい彼といまだに学生に間違われてしまう自分。多少がんばったところで釣り合わないのは承知のうえだが、それでも少しでも魅力的だと思われたかった。

 龍一は優しく笑んで、凛音の鎖骨にキスを落とす。

 彼の唇が触れた箇所がどんどん熱を帯びていく。あっという間に全身に火がついてしまいそうだ。

「ひあっ」
「服なんてどうでもいい。なにを着ていても凛音は綺麗だよ」

 こういう場面ではどんな男性もそう言うのかもしれないが、龍一が凛音に甘い台詞をささやくなんて、夢を見ている気分だ。

 凛音はふふっと花がほころぶような笑顔を見せた。

「お世辞でも、すごくうれしいです」

 龍一が綺麗だと言ってくれた。胸の奥に閉じ込めて、一生の宝物にしよう。

「お世辞じゃないぞ」

 ちょっとむっとした顔で彼は言って、凛音の身体をふわりと抱えあげた。

「ベッドに行こう。本心だって証拠をたっぷりと示してやるから」

 柔らかなベッドに凛音の身体が沈みこむと、それを追いかけるように龍一が覆いかぶさってきた。

 ぎゅっと背骨がきしむほどに強く抱きすくめられ、彼の香りに包まれる。彼の熱が凛音に流れ込んでくる。
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