結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 のらりくらりとかわし続けて、さらに二週間。

 季節は夏本番の八月へと移り変わった。数日前、新しいクルーズ事業も無事スタートした。

 新事業を理由に先送りにしていた凛音の縁談も、いいかげんに覚悟を決めるしかない。そう思っていた矢先に、彼は突然やって来た。

 凛音の縁談相手である菱木譲を、龍一は社長室へと招き入れる。

 彼は丁重に頭をさげて、アポなしの訪問を詫びた。

「どうか無礼を許してください。どうしても、水無月社長と直接お話をしたかったんです」
「いや。いつまでも約束を果たせずに、迷惑をかけているのはこちらのほうだ」

 互いに腰かけるタイミングがつかめず、立ったまま話を続ける。

 譲はまっすぐに龍一の目を見て、話し出す。

「単刀直入に言いますね。僕はあの夜、凛音さんに一目惚れしてしまいました。彼女が水無月の血を引いていないことは知っていますが、そんなものはどうでもいい。もっと言えば、彼女が水無月の娘でなくても、僕は彼女に求婚したい」
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