結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「家に戻ってから話してもいいですか。入院の必要はないそうなので」
「わかった」

 龍一は短く答えると、凛音の背を支えながら歩き出す。

『絶対に近づくな』と使用人たちに言い渡してから、龍一は書斎で凛音とふたりきりになった。

 龍一が扉を閉めると、凛音はすぐに言った。

「妊娠六週に入る頃だと言われました」
「そうか」

 予想どおりの答えに龍一はうなずく。

 すると、凛音は彼の前で膝をつき、床に頭をこすりつけるようにして座礼した。

「なにをっ。身体に障るようなマネは」

 慌てて止めようとした龍一を遮って、顔をあげた凛音が強い声で言う。

「縁談でやっと恩返しができると思ったのに、本当に申し訳ありません」
「馬鹿なことを……凛音のせいじゃない」

 龍一は自分のこぶしを握り締める。

(俺のせいだ。自分の欲望のために凛音の将来を――)

 自身の罪深さに龍一は目まいを覚えた。

 凛音の必死の訴えは続いている。

「龍一さんにも水無月家にも、絶対に迷惑はかけません。だからどうか、おなかの子は……」

 声はか細く震えているのに、龍一を見つめる彼女の瞳には揺らがない強い光が宿っていた。
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