結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
五章
 妊娠発覚の翌日。

 自室のベッドにごろりと寝転んだ凛音は、白い天井をじっと見つめていた。

 龍一から『少なくとも今日一日は休むように』と説得され、有給休暇を取った。

 実際問題として、つわりのせいなのか体調はよくない。酷暑のなか仕事をこなすのは難しく、かえって迷惑になるだろう。

 おなかにそっと両手を当ててみる。

(ここに龍一さんと私の赤ちゃんがいる……)

 その事実自体は、何物にも代えがたい喜びだ。自分の置かれた立場、今後の身の振り方、そんなものどうとでもなると思えるほどの幸せを、おなかの子は凛音に運んできてくれた。

 家族の愛を知らない自分が、まだ生まれてもいない我が子をこんなにもいとしいと思うなんて、なんだか不思議だった。

(私が守る。絶対にこの子を幸せにする)

 その決意だけは絶対だった。

 誰になにを言われようとも、おなかの子を産む決意を凛音はしっかりと固めていた。

「でも……」
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