結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 使用人たちがもっとも忙しい夕刻に、凛音はこっそりと部屋を抜け屋敷を出た。幸い、誰にも見とがめられることはなかった。

 長く世話になった屋敷を振り返って、別れを告げる。

「ありがとう、龍一さん。誰よりも……あなたを愛しています」

 行き先は決めていない。ただ、遠くへ行こうと思った。龍一が簡単には見つけられない場所に行くのだ。

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