結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 龍一は社長室の壁掛け時計を見あげる。時刻は夕方五時より少し前。

(凛音の体調は大丈夫だろうか)

 今日はそればかり考えてしまって、どうにも仕事に集中できていない。すぐにでも自宅に帰り彼女の顔を見たいところだが、このあとは会議の予定だった。

 凛音のことを思うと、胸がじんわりと温まる。

『愛している』と口にできることが、こんなにも幸せなものだと龍一は知らなかった。

 見つめ合い、手をつなぐ。

 どこかへ出かけて、他愛ないおしゃべりに花を咲かせる。

 自分はずっと、凛音とそんなふうに過ごしてみたかったのだ。

 もう我慢はしない。惜しみのない愛を彼女に注ごう、そう決めた。
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