結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「連絡、させてもらえますかね? 将来の社長夫人といつまでもふたりきりでいるわけにもいかないので」

 菅原と龍一との通話は本当に一瞬で終わった。

 スマホを耳から外しながら、菅原がクスクスと笑って凛音の瞳をのぞき込む。

「すぐに行く、とのことでした」
「ごめんなさい、本当に」

 恥じ入るように凛音はうつむく。菅原はふいに真顔になって凛音を見る。

「なにか?」
「これは、社長秘書ではなく彼の友人としての言葉と思ってください」
「は、はい」

 凛音は姿勢を正して菅原の言葉を待つ。

「社長は、お若くしてその地位に就いたせいか……厳しすぎるほどに自分を律してこられました。やりたいことより、やるべきことを優先する」
「はい」
「望めばなんでも手に入る身分ですが、彼はなにも望まない。私は社長がひとつくらい欲しいものを手にしてもバチは当らないと思ってますよ」

 菅原は優しくほほ笑む。

「龍一さんの欲しいもの……」

「その答えは本人に聞いてみてください。あっ」

 玄関からインターホンの音がして、菅原は振り返る。

「本当にすぐ、でしたね」
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