結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「そうですね。創業した曾祖父はもちろん尊敬しています。ですが……」

 龍一はテレビ的な引きを意識した間を取ってから、極上に甘い笑みを浮かべる。

「水無月がここまで大きくなったのは一族の力ではありません。ともに働く社員、取引先企業、そしてお客さまのおかげです」

 龍一はきっぱりと言い切ると、しばしの間じっとカメラを見つめた。

 ややあって「はい、OKです!」というスタッフの声が飛ぶ。

 それをスイッチに、みながいっせいに素に戻って動き出す。

 テレビのオンエアでは、バラエティやインタビュー番組などはとても自然に会話をしているように見えるが、こうして実際に撮影現場を目にするとそうではないことがよくわかる。話す速度も笑うタイミングも、すべてが計算づくなのだ。
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