結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「万が一、俺が社を去ることになってもお前は残れ。トップが交代したくらいで揺らぐ会社にはしていないと自負しているが……優秀な人材は多いほうがいい」
「そんな!」

 その覚悟を感じ取ってはいたが、実際に言葉にされるとやはり凛音は動揺してしまった。

 龍一が水無月シップスを去る。

 そんな姿を見たくはない。だが、不安げな凛音に龍一は不敵な笑みを見せる。

「お前は水無月の名がないと俺がなにもできないと思っているのか? 見くびるなよ」

 龍一は愉快そうに笑って、きっぱりとした声で言う。

「新しい会社のアイディアはいくつもある。孫の代になる頃には水無月を脅かす企業に育てる自信があるぞ」

 菅原はふっと頬を緩ませた。

「それを上層部にも伝えてください。みな、怖気づくでしょうから」

 それから一週間後。

 ふたりは目黒川沿いのとあるビルを訪れていた。

「体調は大丈夫か?」

 凛音は軽くうなずく。

「万全ではないですが、対処法がわかってきた……という感じです」
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