結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 ふたりは言われたとおりに、もう一度ソファに腰をおろす。

「理由を、聞いてもいいですか?」

 丁寧だが物怖じしない態度で、譲はさらりと尋ねた。

「もちろん」

 龍一は言って、まっすぐに譲の目を見据えた。

「俺が彼女を愛しているから。凛音を幸せにできる男をやっと見つけた……そう思ったのに、どうしても手放すことができなかった」

 譲は無言のまま、じっと龍一を見ている。

「お父上、菱木頭取にもあらためて説明に――」
「あぁ、大丈夫です。父には僕から話しておきますから」

 譲の視線がちらりと凛音に向けられる。

 凛音は小さく頭をさげ、「本当に申し訳ございませんでした」と告げた。

 すると、譲はふふっと笑って肩を揺らす。

「僕も凛音さんに謝らないといけないことがあるな」

 思わず小首をかしげた彼女に譲はおどけたように両手をあげてみせる。

「なにを見ているんですか?って聞いたけど、本当は答えを知っていたんです」
「え……」

 マジックの種明かしでもするかのように、彼は蠱惑的にほほ笑む。
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