結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「凛音さんが水無月社長を見つめていることに気がついていました。あぁ、恋をしているんだなぁと。おふたりに血のつながりがないこともうわさで聞いていましたしね」
「それでも、縁談を?」

 龍一はやや困惑気味に聞き返す。譲はにっこりと美しい笑みを浮かべた。

「えぇ。凛音さんはそれだけ魅力的ですから」

 龍一はその言葉を信じたようだったが、凛音は違和感を覚えた。

「あのっ」
「ん?」

 譲の目が凛音に向く。不躾だろうかと少し迷ったが、凛音は思いきって彼に尋ねることにした。

「もし違っていたら申し訳ないのですが……私を選んでくれたのは、私がほかの男性を愛していたから。そうではないでしょうか?」

 譲は大きく目を見開いた。

「私とクルーズ旅行ができたら……そう言ってくれましたよね?」
「あぁ、たしかに言いました」

 記憶をたどるように譲は深くうなずく。

「あのとき、譲さんが思い浮かべたのは私ではなく……」

 言葉にしたことで、はっきりとした確信に変わる。あの瞬間に彼が見ていたのは、思っていたのは、凛音ではなかった。

 深く思う女性がいるのだろう。

「ははっ、あはは」
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