ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
「陛下と? いいえ。ダナース国に来て初めてです」
「まあ。では、運命的な出会いだったのですね」

 ウィルトン子爵夫人は口元に手を当てて、朗らかに微笑む。

「う、運命的!?」

 びっくりしたシャルロットは、げほげほとむせる。
〝運命的〟ではなくて〝運命の悪戯〟だと思うわ、という言葉はすんでのところで呑み込む。誰がまさか、一度の人生で自分を殺した男に再び嫁ぐと思っていただろうか。

「ええ。だって、陛下のシャルロット様への寵愛にはあの祝賀会参加者の誰もが驚きました。陛下は……ほら、女性を寄せ付けないから」
「そうなのですか?」

 シャルロットは意外に思って聞き返す。
 エディロンの甘い囁きは、誰にでもそうなのだと思っていたから。

(誰にでも言っているんじゃないんだ……)

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