ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
考え込んでいると、ダムール侯爵夫人が周囲の参加者に話しかけているのが聞こえた。
「陛下には隠れた敵対勢力も多いから、なかなか心安まる場がないでしょう? 今年はシャルロット様がいらっしゃるから、安心ですわね」
「本当ですね。喜ばしいことです」
周囲の参加者もにこにこと頷いている。
(……敵対勢力?)
聞き慣れない言葉に、シャルロットは持っていたティーカップの紅茶を見つめる。
一度目の人生でも今世でもエディロンからその話は聞いていない。
けれど、国の成り立ちを考えれば敵対勢力がいるのは至極当然だ。多くの貴族達は、レスカンテ国からダナース国になるにあたって既得権益を剥奪されたのだから。
(それって、エディロン様が即位していることを試みよく思っていない貴族がダナース国内いるってことよね?)
知らなかった事実に、胸の内にざわざわとした不安が広がるのを感じた。