ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
シャルロットは咄嗟に、彼から目を逸らす。
「毎日とても頑張ってくれているから、気分転換になったならよかった」
「陛下……」
農作物の様子を視察に行こうだなんて言っていたけれど、本当はシャルロットが見たいと言ったから連れてきたのだろう。
シャルロットはぎゅっと胸の前で手を握る。
「陛下はなぜ、わたくしにこのように良くしてくださるのですか?」
それは、この国に来てからの疑問だった。
エリス国の王女をダナース国の王妃に。それがダナース国にとって利益になることはわかっている。しかし、シャルロットはエディロンと契約による婚約を提案した。だから、彼はシャルロットにこんな風に優しくする必要などないのだ。
「俺は最初──」
エディロンは考えを整理するかのようにゆっくりと口を開く。
「あなたとの婚約に乗り気ではなかった。エリス国で出会った王女は明らかにダナース国を見下していることが言葉や態度の端々から覗えたから」