ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
「妃殿下。そろそろご準備のために──」

 そう言われてエディロンに視線を向けると、エディロンは小さく頷き返してきた。

「ええ、わかったわ」

 シャルロットは女官長に促されるとおりに部屋に戻ることにした。

 今宵は結婚式の夜。
 新王妃であるシャルロットには披露宴と同じ位大事な役目が残っている。国王であるエディロンとの閨だ。
 それは周知の事実であり、準備のために新王妃が先に披露宴会場をあとにするのは多くの国で見られる習慣でもあった。

(ここまでは上手くいっているわよね?)

 シャルロットは披露宴会場から部屋に戻る途中、今日のことを振り返る。不手際はないはずだ。

「おや、シャルロット妃殿下」

 考え事をしながら歩いていたシャルロットは突然話しかけられてハッとする。顔を上げると、廊下の前方から歩いて来るのはハールス卿だった。今日の結婚披露パーティーに参加しているのだろう。

「ご機嫌よう、ハールス卿」
「もうお戻りになるのですか?」
「そうしようと思います」
「さようですか。もう少しお話ししたいと考えておりましたが、残念です。また後日」
「ええ。また今度」

 シャルロットは軽く会釈すると、また歩き出す。
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