ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
いやが上に出も緊張してくるのを止められない。
気持ちをどうにか落ち着かせようと座っている大きな天蓋付きベッドのシーツを指でなぞる。そして、自分が一度目の人生と全く同じ行動をしていることに気付いて苦笑した。
そんな中でも、一度目の人生と違うこともある。
この寝室にシャルロットがひとりきりではないことだ。
「シャルロット。大丈夫か?」
必死に震えを止めようと指を握り込んだとき、大きな腕に包み込まれた。
「やはり、今からでもシャルロットはこの部屋に残って、俺だけが隣に部屋に──」
「いえ、大丈夫です!」
シャルロットは大きく首を左右に振る。
それでは、一度目の人生と全くの同じ状況になってしまう。
ここは国王の寝室であり、入口はふたつある。
それぞれ、国王と王妃の部屋へと続く扉だ。しかし、どちらも堅牢な造りをしている上に特殊な構造の鍵を使っており、鍵を持たない第三者が開けることはほぼ不可能だという。
つまり、ここダナース国の王宮の中でも最も侵入しにくい部屋のひとつなのだ。
だからこそエディロンは、自分だけが外の私室にいるからシャルロットは安全なこの部屋にいるようにと言ってきた。ちなみに王妃の私室にもセザールがいるので、そちらからの侵入も不可能だ。
ここは安全だ。
そうはわかっていても、今日だけはどうしてもひとりになりたくない。
「心配するな。シャルロットのことは、絶対に俺が守る」
エディロンはシャルロットを自分の膝に乗せると、しっかりと抱き寄せて安心させるように背中を撫でる。
「はい」
その温もりが心を落ち着かせてくれて、シャルロットもエディロンの胸に顔を寄せた。
(大丈夫。エディロン様はわたくしを殺したりしないし、守ってくださる)
そう自分に言い聞かせた。