ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
エディロンの顔が近づいてきたので目を閉じると、触れるだけのキスをされた。
エディロンは、はあっと息を吐く。
「本来であれば、ようやく今夜、あなたを存分に愛せると思っていたのだが──」
心底残念そうに、エディロンは呟く。
「残念でならないが、楽しみはとっておく」
「は、はいっ!」
意味を理解して、顔が真っ赤になってしまう。
今世でもやっぱりエディロンは今日の今日までシャルロットと一線を越えようとしなかった。その日が来るのを楽しみにしておくと言っているのだ。
また沈黙がふたりを包み、時計の音がカチ、カチと聞こえる。
そのとき、部屋のなかに突如として白いものが現れた。シャルロットの使い魔である、白猫のルルだ。
「ルル!」
シャルロットは声を上げる。
今夜、怪しい者がいると聞いてシャルロットはルルとハールに頼んでこの部屋の周辺を見回りしてもらっていた。ルルとハールは一見するとただの猫と小鳥だし、鍵が閉っていても部屋に入ってこられるから。
ルルはぴょんとシャルロットの膝に飛び乗る。
「見回ってきたのね。どうだった?」
「うーん。この部屋の周辺には怪しい人はいなかったけど──」
「けど?」
シャルロットはルルに先を促す。