ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
「庭園の奥で話し込んでいるふたりがいて、おかしいなって思ったわ」
「庭園の奥?」
「ええ。明かりもないに、こそこそ話していたわ」
「それは、男女の戯れではないのか?」
エディロンが横から尋ねる。パーティに男女の恋の駆け引きは付きものであり、意気投合したふたりが人目を忍んで庭園の奥へ行ったと言うことも考えられる。
「それはないと思うわよ。ふたりとも男の人だったし、何かものをやり取りしていたもの」
「もの? 何を?」
シャルロットは尋ねる。
「わからないわ。何か長細いもの。黒かったわ」
「誰だかはわかる?」
「わからない」
ルルの返事を聞き、シャルロットは途方に暮れる。これでは、ほとんどなんの情報にもならない。とは言え、シャルロットの願いを聞いて周囲を見回り報告してくれたルルを責めるのはお門違いだ。
「ルル、ありがとう」
シャルロットはルルの頭を撫でようと、手を伸ばす。その毛並みに触れた瞬間、ぞくっとした。おびただしい映像が頭の中に流れ込んできたのだ。