ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
(え? どういうこと?)
そう言えば、一度目の人生でも不思議なことがあった。
解錠の魔法が上手く使えないはずのシャルロットが、いとも簡単に寝室とエディロンの私室の鍵を開けられたのだ。
この寝室の鍵は特に厳重で特殊な構造になっている。普通の鍵すら上手く開けられないシャルロットに開けられるはずがないのだ。
(もしかして、わたくしの魔力が強くなっているの?)
理由はわからないけれど、そんな気がした。試しにハールを探そうと意識を集中させると、すぐに見覚えのある廊下が見えた。
(ここは、王宮の廊下ね)
天井に美しい絵画が描かれシャンデリアがぶら下がり、円柱状の柱が等間隔に並ぶこの廊下は本宮の内部にある国王のプライベートスペースへと繋がる廊下だ。そこを、黒いケープを被った男がいそいそと小走りで進んでいる。明らかに怪しいのに、周囲の警備を行う騎士達は気付いている様子がない。
「これ、明らかにおかしいわ……」
「シャルロット。何がおかしい? 一体どうしたんだ?」
様子がおかしいシャルロットに困惑したエディロンがまた問いかけてきた。
そのとき、エディロンの私室側のドアからカシャンと僅かな音がした。