ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが

(もしかして、フリードは王妃様とオリアン卿の子供?)

 シャルロットは驚いたが、同時にすんなりと腑に落ちた。
 オリアン卿はエリス国王と同じく黒い髪に黒い瞳をしており、魔法庁の長官になるほど魔力が強い。そしてずっと王妃様の近くに仕えてきて、王妃同様にシャルロットに冷たかった。

「それと、先ほど聞き捨てならないことを言ったそこの着飾った娘もエリス国の王族ではない。シャルロットの魔力はお前などよりずっと多い。勘違いも甚だしい」

 ガルがリゼットのほうを鼻先で指す。

「なんですって? 嘘よ! 嘘だわ! お父様、この生き物はでたらめを言っております。神竜ではなく魔竜だわ」

 リゼットが立ち上がって叫ぶ。

 すると、地を揺らすような雄叫びが部屋の中に響き渡った。

「娘。俺が偽りを言っていると侮辱するか」

 怒りを孕んだ低い声に、リゼットは「ひっ!」と悲鳴を上げる。そのまま腰を抜かし、その場にへたり込んだ。

「しかし、どういうことだ? 神使は王位継承権をもつ王族に遣わされるものでは──」

 混乱する状況に青くなったエリス国王がぶつぶつと呟く。
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