ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
 シャルロットからは、執務机に向かうエディロンの後ろ姿が見えた。ちょうど立ち上がったので、慌てて近くのドレープカーテンの影に隠れる。カツン、カツンと靴が床にぶつかる音が近づいてくる。

(近くにいらしたら抱きついて驚かせちゃおうかしら?)

 そんなことを考えてふふっと小さく笑っていると、突如胸の辺りに鋭い痛みが走った。

「え……」

 何かを考える間もなく、けほっと口から血があふれ出す。鋭い痛みに胸に手を触れると、固く冷たい感触と共にぬるっとした血の感触がした。

(嘘……)

 自分は剣で胸を刺されたのだ。すぐにそう悟った。

「それで隠れているつもりか? エリス国のドブネズミが」

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