ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
 フリードとは、シャルロット達の義理の弟である第二王子だ。国王と王妃様の間にできた子どもであり、まだ十歳になったばかりだ。

 そんなことないわ、と言いかけて、シャルロットは口をつぐむ。過去にジョセフが王位継承権を巡ってどんな目にあってきたかを、なんとなく知っているから。
 エリス国の王位継承権を持っているのは国王の子どもであるジョセフとフリードの二人だが、王妃様は当然のように自分の息子であるフリードを推している。そして、王妃様の顔色をうかがっている国内貴族も軒並みそれに同調している。

「姉さんこそ参加しなくてよかったの? 今度こそ幸せな結婚に繋がるような良縁が見つかるかもしれないのに」

 ジョセフは、逆にシャルロットに聞き返してきた。

「いいの! わたくし、ようやく気付いたの。結婚するとだめなのよ!」

 シャルロットは胸の前で、ぐっと拳を握る。

 シャルロットとジョセフのふたりには、不思議な記憶がある。それは、前世の記憶だ。

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