ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
 一度目の人生ではシャルロットを名指しで求婚があったが、二度目以降はあの舞踏会でエディロンには会っていない。この書簡に書かれた『エリス国の王女』というのはリゼットを指していると考えて間違いないだろう。

(リゼットはリゼットで、大変だったのね)

 もう自分は修道女になる許可をもらったので関係ないことだ。
 完全に人ごととして、彼らのやり取りを眺める。

 さめざめと泣くリゼットに寄り添っていた王妃のオハンナは悲痛な表情で国王を見上げた。

「あなた。こんなに嘆き悲しむリゼットを行かせることなどできません。なんとかなりませんの?」
「そうは言ってもだな」

 国王陛下は眉根を寄せ、あごひげを撫でる。彼とて嫌がる娘を嫁がせることに良心の呵責を感じているようだが、国と国の均衡などを考えるとこの申し入れを無下にすることは難しいのだろう。
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