ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
ダナース国の前にあったレスカンテ国は、王族と一部の貴族が民に寄り添わなかった故に滅んだ。幼少期に見た、人々が圧政の下で貧困に喘ぐ苦しい記憶が残るエディロンにとって、彼女は最も嫌悪するタイプの王族だった。
その一方で、側近のセザールが言うとおり、エリス国の王女を妃に娶ることは神に祝福された国の王女が血族に入ることを意味し、周辺国には大きな牽制力として働くことは確かだ。
(国王であるならば、私情より国益を優先させるべきか……)
エディロンはじっと目を閉じて考える。気は進まないが、致し方ない。
「わかった。王女を娶りたいとエリス国王へ書簡を出そう」
「それがよろしいかと」
「では、手配を頼む」
「かしこまりました」
セザールはほっとしたように表情を緩めると、途端ににかっと歯を見せて笑った。