ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
(あら?)

 廊下を歩いていたシャルロットは、ふと立ち止まる。思っていた方角と違ったのだ。

 シャルロットは一度目の人生で、ダナース国の王宮で一年間ほど過ごした。今向かっているのは本宮ではない、離れの離宮に思える。
 ちなみに、一度目の人生ではその離宮に一度も足を踏み入れたことがなかった。

「どうかされましたか?」

 セザールが立ち止まってきょろきょろするシャルロットに気付き、こちらを振り返る。

「いえ。とても広いので迷子にならないようにしっかりと覚えなければと思いまして」

 シャルロットは慌てて表情を取り繕う。

「ああ、なるほど」

 セザールは頷く。

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