ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
 セザールが尤もな疑問を投げる。

「わからない」

 エディロンは首を横に振る。
 セザールの疑問は最もだった。諸外国を招いたあれだけの大規模な舞踏会を主催しておいて、ホスト国の王族が欠席するというのは通常考えにくい。しかも、エリス国王からは一部の王族が欠席しているという一言すらなく、まるで最初からいないかのような扱いだった。

「…………。セザール、少し彼女について調べておいてくれるか?」
「わかりました」

 セザールは頷く。

(なにもなければいいが──)

 そこまで考えて、首を振る。

 エリス国の王女を王妃に迎えようとしたら、やってきた王女は想像していた人物とは別人で、さらには顔を合わせるなり婚約破棄してほしいと言い出した。

 これだけでも十分大事件だ。

 
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