ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
 ダナース国の周囲には多くの国々があるが、エリス国は最も歴史が古いし、神聖な国と呼ばれているのもエリス国のみだ。娶ったときの対外的印象に対するメリットが一番大きいと判断したのだろう。

「なんとしても婚約破棄を成功させないと」

 そのためには、一年以内に目に見える成果を出さなければならない。
 失敗すれば、待つのは〝死〟のみだ。

「ルル、ハール」

 シャルロットはなにもない宙に向かって呼びかける。
 その呼びかけに応じて、部屋の中に忽然と白猫と文鳥が現れた。彼らはシャルロットの使い魔なので、シャルロットがどこにいようとも彼女の前に現れることができるのだ。

「お願いなのだけど、王宮や町の中を回って今どんな感じになっているが探ってきてくれる?」

 今必要なのは、情報だ。ダナース国内の情勢について知る必要があるし、上手く婚約破棄できた際に備えて生活地盤を固め始めないとならない。
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