ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
4.六度目の人生を謳歌します

(1)

 ダナース国に来てから一カ月ほどが過ぎた。

 この日、シャルロットは私室でハンカチに刺繍をしていた。

「よし、できた」

 シャルロットは今完成したばかりのハンカチを目の前にかざす。幸運を現わす四葉のクローバーと共に、ここダナース国では自由を現わすと言われる白鳥をあしらったデザインだ。

「まあ、シャルロット様。今回の作品もお上手ですね」

 ひょっこりと覗き込んできて感嘆の声を上げたのは、シャルロット付きの侍女──ケイシーだ。

 ケイシーは侍女をひとりも連れてこなかったシャルロットのためにダナース国が手配してくれた侍女で、三つ編みにした焦げ茶色の髪の毛と少し小さめのお鼻がチャームポイントの、可愛らしい女性だ。年齢はシャルロットと変わらぬ、十九歳だ。

「ふふっ、ありがとう」

 褒められて悪い気はせず、シャルロットはケイシーににこりと微笑みかける。
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