天才幼女錬金術師に転生したら、冷酷侯爵様が溺愛パパにチェンジしました!2
 イチゴのジャムタルトはミリエラの好物であるというだけではなく、ディートハルトも好むということもあって、いくつも用意されていた。

 彼が楽しく過ごしているのなら、自分は食欲を満たす方に回ろう。

 プレゼントを渡すという大役はもう終わったし、このあとミリエラがやるべきことはない。

 とりわけ用の皿を手に、タルトの置いてあるテーブルに近づこうとした時だった。いきなり後ろからぐいっと髪を引かれる。

「──いったあ!」

 こんな乱暴なことをする人は、この家にはいないはずなのに。空の皿を手にくるりと振り返ったら、そこにいたのはライナスであった。

「おい、お前」

 お前なんて呼ばれなければならない理由はないので、ミリエラはぷいと顔をそむけた。相手は王子殿下であるが、無礼な相手に礼儀正しく接する必要はない。

「おい、お前! 僕が呼んでるんだぞ。無視するな」
「知りませーん」

 無礼に振る舞われて我慢する必要はない。そもそもミリエラは、我慢するのが嫌いなのだ。

「お前だろ、兄上をだましたのは!」
「……は?」

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